不整脈のお話
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ホームECG心電図

藤田保健衛生大学 循環器内科 教授 渡邉 英一






藤田保健衛生大学 循環器内科 教授 渡邉 英一

第1話 心房細動

近年、注目を集めている病気に「心房細動(しんぼうさいどう)」という不整脈があります。不整脈と言われてもわからない人も多いと思いますが、心臓病の一つで、長嶋監督やオシム監督のような脳梗塞の原因となることがあります。病院で、心電図をとらないと診断はできませんが、家庭で記録ができる携帯型心電計「myBeat ホームECG」(以下、マイビート)を紹介します。

人間の心臓は、通常は一分間に60回ほど拍動しますが、心房細動では一分間に100回ぐらい拍動します。こうなると、半数の人は、「胸がドキドキする」とか、「ざわざわする」という症状がでます。この発作は、一時的であり、放っておいても自然におさまることも多いのですが、一度出ると、その後、発作の回数が増えるだけでなく、もとに戻りにくくなるため、薬を飲んだり、中には電気ショックを行って元に戻すことがあります。さらに心房細動は、このように不快な症状をもたらすだけでなく、将来的には脳梗塞や心不全のリスクが上がることが知られています。図1は私が考案した「心房細動ピラミッド」です(図1)(1)。これは、心房細動の原因や、日本の予想患者数、そして、将来起こりうる合併症を示したものです。

<ケース1>
ここで、飲酒や運動後に「胸がざわざわ」したり、「どきどきする」ことに気づき、マイビートで心電図を記録した人を紹介します。この方は、65歳の男性で、検診で高血圧と言われていましたが、治療は行っておりませんでした。飲酒をしたわけでもないのに、ある晩、多量の排尿と動悸があったことを同僚に話したところ、マイビートで心電図をとることを勧められました(図2)。1週間にわたって毎朝記録したところ、「不規則脈で医師に相談しましょう」というコメントがでたので、これをプリンターで印刷して産業医に見せたところ、「心房細動かもしれない」と言われ、循環器内科を紹介されました。心房細動は、特に「なりたて」が危ないと言われています。しかし、心房細動とは何か、症状はどんなものがあるか、そして放っておくとどうなるかなどの知識が広まっていないために、危険性を知らずに過ごしている人がたくさんいると考えられます。

近年のスウェーデンの研究を紹介します。年齢75歳の住民7173例に、マイビートに似た携帯型心電計を貸し出して1日2回、2週間記録してもらいました。その結果、218例(3%)にあらたな心房細動が見つかりました(2)。この方たちは、その後、医療機関を受診して検査を行いました。心房細動は、65歳以上で、高血圧や糖尿病のある人、あるいは、脳卒中になったことのある人に多く発生することが知られておりますので、もし、数分以上続く動悸を感じたら、マイビートで心電図をとって「不規則脈で医師に相談しましょう」という表示が出るかどうかを確認すると良いと思います。

<ケース2>
もう一人の方は、高血圧で治療中の方です。毎朝血圧を測っていると、時々「測定エラー」がでたり、脈が多い日があることに気づきました。薬をもらいに行った際に、医師にこのことを話したところ、「それは不整脈かもしれない」と言われました。早速、24時間心電図(ホルター心電図と言います)をとってもらったのですが、異常はないと言われました。しかし、その後も、脈が速い日があることから、インターネットで「携帯用心電図」で検索したところ、自分で心電図がとれるマイビートがヒットしたため、早速購入して記録することにしました。心房細動は夜寝ている間に出て、昼までには止まることが多いので、毎朝血圧を測るときに記録すると良いと思います。


図1.心房細動ピラミッド

心房細動ピラミッド


心房細動の原因として、さまざまなリスク因子が隠れています。図中の星印は心房細動と関連の強い因子です。特に若い人の場合は、過労やストレス、アルコールなども原因とされます。過度な運動(自転車競技やトライアスロン、マラソンなど)を長く行うと発症率が上昇しますが、反対に、まったく運動をしない人も発症率が上がります。現在、日本では、100人に1人が心房細動を持っているとされますが、高齢になるほどこの発症頻度は増加します。さらに、心房細動では年次約2-5%の頻度で脳梗塞や全身性塞栓症が合併するとされます。脳梗塞が起きると、ろれつが回らない、麻痺が残るなど、QOL(生活の質)が損なわれます。このため、心房細動の患者さんは、医師のもとで、抗凝固療法(血液サラサラの薬)を行うのが良いでしょう。

図2.マイビートで記録された心房細動の心電図

マイビートで記録された心房細動の心電図


心房細動の診断は専門医でも困難なことがあります。心電計を手ではさむ際に手がプルプル動かないようにしましょう。手が震えると、ノイズが入り判読が難しくなります。

 

1.渡邉英一、改定 始まりは心房細動 -脳梗塞にならないように- 東京:ライフメディコム;2017
2.Svennberg E, Engdahl J, Al-Khalili F, Friberg L, Frykman V, Rosenqvist M. Mass Screening for Untreated Atrial Fibrillation: The STROKESTOP Study. Circulation. 2015;131(25):2176-84.


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